【少子高齢化による労働生産人口の減少、溶接作業者の若年層不足、それによる技術力格差の広がりに対するソリューション】
2018年4月25日から28日に東京ビックサイトで開催された国際ウェルディングショーを視察してきました。
今回から、皆さまと展示内容を見ていきたいと思います。
前回の記事を読まれていない方はコチラも読んでください。
【視察報告】国際ウェルディングショー vol.1 “溶接を取り巻く環境”
溶接をとりまく課題の中で、まず初めに取り上げたいのは
少子高齢化による労働生産人口の減少です。
溶接にかかわる労働者は高齢化しているが、なり手が少なく、人手不足になっており
若年層不足および、それによる技術力格差の広がりが課題になっています。
このような状況は、今後ますます深刻化していきます。
ウェルディングショー出展各社はどのような課題解決策を提案していたのでしょうか?
ニーズ1)初心者でも操作が簡単で、直感的な操作ができる使いやすい溶接機
ニーズ2)自動化のハードルを下げる初心者でも操作が簡単で使いやすいロボット
ニーズ3)効率的な人材育成のやり方
ニーズ毎に展示内容を見ていきたいと思います。
ニーズ1)初心者でも操作が簡単で、直感的な操作ができる使いやすい溶接機器は
若年層不足による、溶接スキルの格差問題の解決策になります。
ダイヘンブースでは、かなり普及してきたデジタル溶接機welbee溶接機を
タッチパネルで操作ができるようにして展示していました。
タッチパネルで直感的な操作が可能なので、スマホ操作に慣れている若年層には使いやすくなっており
多言語対応も可能なので、日本でも多くなっている外国人作業者にも対応できます。
Panasonicブースでは、次世代溶接機としてNext Full Digitalを展示していました。
前面の液晶ディスプレイには操作に必要なパラメーターのみが表示されます。
高性能な溶接機を誰でも簡単に使いこなせるように
対話形式で条件微調整ができる溶接コンシェルジュ機能があり
直感的な操作による“つかいさすさ”が特徴です。
PanasonicブースではデジタルTIGフィラーも展示していました。
TIG溶接のフィラー挿入はスキルが必要なため
将来的にはTIG溶接の技術者が不足すると言われています。
私も左手でTIG溶接棒を送りながら溶接するのは上手くできないので
よくわかります…
初心者でも溶接ナビ連動のフィラー装送給装置を使えば
容易に条件設定が可能なので、半自動溶接のように溶接作業ができるという解決策の提案です。
次世代溶接機Next Full Digitalの“つかいやすさ”はコチラの動画でご覧ください。
https://info.maruyoshi-k.co.jp/contents/video001
1:50頃から、3:55頃から
ニーズ2)自動化のハードルを下げる初心者でも操作が簡単で使いやすいロボット
人手不足に対しては自動化のニーズもあります。
自動化の中心であるロボットも溶接機と同様に
初心者でも操作が簡単で使いやすい事が求められます。
溶接を人手作業している会社がロボット生産に変更する難所として
ロボットを操作する人材が必要になります。
特にティーチングに必要なロボット操作はスキルが必要で
ティーチング操作が出来ても時間がかかるという難所があります。
さまざまなロボットメーカーでは、ダイレクトティーチング※によってティーチングペンダントを使用しない
ティーチング・ソリューションを提案しています。
※ロボットを直接動かし、操作を教え込むこと。
トレーニングが必要な従来のティーチペンダントによるロボット操作とは違い直感的な操作で
簡単にロボットを動かすことができる。
YouTube:ダイレクトティーチングをしている動画
https://info.maruyoshi-k.co.jp/contents/video002
PanasonicブースではダイレクトティーチングにVR技術を活用した“スマートトーチ”によるソリューションを提案していました。
“スマートトーチ”はコチラの動画でご覧ください。
https://info.maruyoshi-k.co.jp/contents/video003
“スマートトーチ”によるティーチング作業はオフラインなので
どこでもダイレクトティーチングが可能であり
デバイス(スマートトーチ)も小型軽量なので、実機によるダイレクトティーチングより
操作が簡単で使いやすいと思います。
ウイルテックというシステムインテグレーターは
レーザセンサーを使用してワークの特徴位置を画像で検出して自動溶接するソリューションを展示していました。
デモンストレーションはコチラの動画でご覧ください。
https://info.maruyoshi-k.co.jp/contents/video005
カタログのダウンロード
https://info.maruyoshi-k.co.jp/contents/catalog001
汎用ロボットセルと組合せて展示していました。
動作の追加・変更がタッチパネルでできるのでラダー操作が不要で誰でも使いやすい
ロボット化ソリューションを提案していました。
カタログのダウンロード
https://info.maruyoshi-k.co.jp/contents/catalog002
ドイツエッセン溶接フェア視察報告でも紹介したVR技術・AR技術を活用した溶接トレーニング装置に関しては
バーチャル溶接シュミレーター体験のブースが設置されていて
リンカーン(Lincoln Electric)、フロウニアス(Fronius)、Soldamatic(Seabery社)
各メーカーのバーチャル溶接シュミレータ-が体験できるようになっていました。
溶接業界として今後の人材育成はバーチャル溶接シュミレーターが普及すると考えている表れと思います。
バーチャル溶接シュミレーターの日本製品の展示はなかったようです。
ドイツでの報告と重複しますが、各メーカーのバーチャル溶接シュミレーターを画像と動画で見ていきましょう。
リンカーン(Lincoln Electric)
動画:https://info.maruyoshi-k.co.jp/contents/video006
フロウニアス(Fronius)
動画:https://info.maruyoshi-k.co.jp/contents/video007
Soldamatic(Seabery社)
動画:https://info.maruyoshi-k.co.jp/contents/video008
私もドイツに引続き今回も、上記各メーカーのシュミレーターを体験させてもらいました。
慣れないと溶接中の母材とトーチの位置関係がわからなくて難しいですね。
アークの熱と反力はないですが、視覚と聴覚はなかなかリアルです。
トーチの動かし方はシュミレーターの方がシビアに採点されるので
トーチ角度、溶接スピード、母材間距離などは繰り返し練習すれば上達は早いでしょうね。
実機と組合せたトレーニングだと思います。
ちなみに、私の個人的な感想では、溶接面をかぶって溶接する時の
映像を見る感じが“Soldamatic”が一番好きですね。
皆さまも、機会があったら各メーカーのシュミレーターを体験してみてください。
それと、上記3社メーカーの他にもフランス(MIMBUS社)製のバーチャル溶接シュミレーターも展示されていました。
メーカーのホームページ
https://info.maruyoshi-k.co.jp/contents/web001
もちろん、こちらも体験させてもらいました。
3Dメガネをかけて、タッチパネルにペンで溶接していくので
他のシュミレーターとは違った特徴がありますね。 簡易的なトレーニングと思います。
バーチャル溶接シュミレーターは、人手不足のなか
溶接初心者が安全に効率よく溶接技能を習得する解決策ではありますが
装置本体が高額なので、普及にはコストのハードルが高いと思います。
Panasonicブースでは人材育成ソリューションとして“センサートーチ”を参考展示していました。
これは実際の溶接トーチにジャイロセンサー(角速度センサー)、振動センサーを取付けて
作業者のトーチの動きを、溶接中にモニター、ロギングしていくというものです。
私が現物のトーチを動かすとモニターのトーチがどうなるのか?
コチラの動画でご覧ください。
https://info.maruyoshi-k.co.jp/contents/video009
バーチャル溶接シュミレーターもトーチ角度や振動は採点項目になりますが
実際の溶接中に測定するので、より実践的なトレーニングになりますね。
今回は、少子高齢化による労働生産人口の減少、溶接作業者の若年層不足、それによる技術力格差の広がりに対して
1)使いやすい溶接機 2)使いやすいロボット 3)効率的な人材育成 のニーズごとに
ウェルディングショー出展各社がどのような課題解決策を提案していたのかを見てきました。
皆さまのご感想をぜひお聞かせください。
ウェルディングショーの視察報告はまだまだ続きます。