2019年6月25日~28日まで上海で行われた北京エッセン(溶接展示会)を視察してきました。
今回から5回に分けて、その様子を皆様にお伝えします。
まず1回目は、中国の溶接業界についてです。
中国の溶接業界のトレンドは「自動化」と「品質保証」です。
国内の急激な経済成長に伴い、中国溶接業界も新たな課題に突き当たっています。
北京エッセンではその課題を解決するために、「自動化」と「品質保証」を叶えることができる製品に注目が集まっていました。
(1)中国溶接業界の現状「自動化」
(2)中国溶接業界の現状「品質保証」
(1)中国溶接業界の現状「自動化」
「自動化」が中国溶接業界においてトレンドとなっているのには2つの理由があります。
・高騰する人件費
1つ目の理由は高騰する人件費です。
かつて安く抑えられていた中国の人件費は、ここ20年で5倍上昇しました。
・東莞…中国華南地域における加工貿易の最大拠点
・1500元…約22500円 (2015年)
その結果、今まで人の手で行なっていた作業をロボットに任せることで、高騰した人件費を削減しようとする動きが活発になっています。
・人手不足
自動化に注目が集まる2つ目の理由は人手不足です。
溶接は危険を伴う作業であり、技術習得まで時間がかかるのに、近年、若年層の溶接作業者のなり手が少なくなっていて、溶接工が足りない状況が深刻化しています。
足りない人手をまかなう手段として、自動化が注目されています。
以上の2つの理由から、北京エッセンでは溶接ロボットの展示が多くみられました。
展示内容としては、世界最新の溶接技術を使ったロボットの展示よりも、ロボットを実際の溶接作業に取り入れるイメージの為の展示が主でした。
例えば……
「どんな風に動くの?」
アーク溶接ロボットのシンプルな設備構成を展示
「最先端溶接のロボット溶接はどのようにやるの?」
フローニアス社CMT溶接機、ヒュームコレクターとロボットの組合せを展示
など……
これから自動化を取り入れたいと考えている人の疑問に応えることのできる展示が多数みられました。
今まさに国内で自動化が急速に広まり始めている中国ならではの特徴といえるでしょう。
(2)中国溶接業界の現状「品質保証」
中国の溶接に対するニーズは二極化しています。1つは中国国内向け製品を生産している企業の従来からある低コストのニーズです。
そして2つめが品質保証のニーズです。品質を重視する中国企業は主に、輸出向け製品を生産したり、中国新幹線など政府が力を入れている分野の生産をしています。安く製品を仕上げることよりも、厳しい基準をクリアすることが強く求められているのです。
北京エッセンではそのような企業に向けて、品質保証がうたわれた溶接製品が多く展示されていました。
品質保証のニーズに応える展示として多くみられたのが、デジタル溶接機です。
デジタル制御の溶接機を導入することによって、再現性のある安定した溶接品質を確保することができます。
これは、今まで職人の技術・感覚に拠るものが大きかった溶接品質を大きく改善することができるものとして注目を集めていました。
このように、中国溶接業界は今「高騰する人件費」「人手不足」「品質保証」といった課題と向き合っており、その結果今回の北京エッセンでは、溶接ロボットや、デジタル溶接機を解決策として提案する展示が目玉とされていました。
以上、北京エッセンから “中国溶接業界の現状” をお伝えしました。
第2回は、今回の目玉の1つとされていた“ロボット溶接” についてお伝えします。
【視察報告】北京エッセン2019 vol.2 “ロボット溶接”