2019年6月25日~28日まで上海で行われた北京エッセン(溶接展示会)を視察してきました。前回に続き5回に分けて、その様子を皆様にお伝えします。今回は、中国溶接業界において今まさにトレンドとなっているデジタル溶接機についてお伝えします。
これまでの記事で触れてきた通り、中国において「品質管理・品質向上を叶えたい」という声がより大きくなっています。溶接機という分野でこのニーズに応える為に、北京エッセンでは多くの溶接機メーカーが、アナログ溶接機より高品質で再現性の高い溶接が可能なデジタル溶接機の展示に力を入れました。
中国のアルミ消費量は世界全体の5割以上で、日本の18倍です。デジタル溶接機の展示においても、特にアルミ溶接がターゲットとされていました。
アルミは難易度が高い溶接でありながら、需要があり、品質の良さも求められていることから、アルミのデジタル溶接機の展示が目立っていたと思われます。
特に中国政府が力を入れている新幹線車両のアルミ溶接においては、高い品質が求められるためメーカー各社がターゲットにしていると実感しました。
以前から中国で高性能のアルミ溶接機といえば、フローニアス社製と言われており、現在もその優位性は揺るがないと競合メーカーから聞きました。
TIG溶接は日本より少ないようです。そのためTIG溶接機の展示はMIG溶接よりかなり少ないと感じました。
パナソニックの展示から
中国市場向けに開発された最高級機GL5シリーズの展示
日本より使用環境が悪いことを考慮した堅牢なボディになっています
デザインは日本市場向けとは違ってエサブなどのグローバル溶接機メーカーに似せています
アルミだけでなく鉄・ステンレスの溶接が可能なオールインワン溶接機です
ダイヘンの展示から
最高級機種であるデジタル溶接機P400を展示
アルミだけでなく鉄・ステンレスの溶接が可能なオールインワン溶接機です
タッチパネルによる直感的な操作、多言語表示対応により
デジタル溶接機の特徴のひとつである、初心者でも操作可能な溶接作業の簡易化をアピール
山東時代の展示から
中国国内でトップメーカーである山東時代もデジタル溶接機の展示に力を入れている
国内だけでなく海外へも販売していて、ロシア向けにまとまった台数を受注したと聞きました
EWMの展示より
アルミ薄板溶接のデモが多く見られました。
ドイツのトップの溶接機メーカーであるEWM
溶落ちしやすく難易度が高い溶接でデジタル溶接機の性能をアピール
板厚1mmtのテストピースを1.2mmワイヤーでハンド溶接の実演
アルミ溶接は日本メーカーの方が進んでいると話してくれました
日本では10年前に普及し始めたデジタル溶接機ですが、製品品質向上の意義が見直されている中国では、これからがデジタル溶接機の流行時期と言えるでしょう。その為、今最も注目度の高いアルミ溶接に対して、デジタル溶接機がどのように活躍できるのかをわかりやすく、デモの形式で展示しているブースが多く見られました。デジタル溶接機が今までのアナログ溶接機と、どのような点が違うのか、優れているのかをアピールするのが主な目的であったようです。
以上、北京エッセンから“デジタル溶接機”の展示内容をお伝えしました。第5回では、北京エッセンに出展された各ブースの最新技術をご紹介します。
【視察報告】北京エッセン2019 vol.5 “最新の溶接技術”